インドネシア教会の宣教と神学
インドネシア教会の宣教と神学
開発と対話と解放の神学の間で
木村公一著
本体価格:3,000円(10%税込定価:
3,300円)
サイズ:A5判
392ページ
ISBN:4-400-32755-8
発行年月:2004/04/15
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内容紹介
貧困と開発独裁、巨大なイスラム人口と特異な伝道宗教……。インドネシア教会をとりまく複雑な状況の中で苦闘し、宣教の課題に挑戦する教会と神学者たちを、批判的=連帯的な視点から活写する。また独特な宗教・政治・経済状況の中なる教会を綿密に分析した労作。
本書は、17年に及ぶ宣教師としての働きをなしてきた著者にして初めて書くことのできた、まさにパイオニア的業績である。今後インドネシアのキリスト教を語る上で欠かすことのできない基礎文献となるだろう。
【目次より】
序 論
1. 問題の所在
2. 研究の動機
3. 研究の出発点としての戦争罪責
4. インドネシア教会を省察する三つの視点
5. 研究の対象
6. 研究の方法
7. 概念の解説
8. 読 者
9. 凡 例
I インドネシア教会の社会文化史的環境
A. インドネシアの社会文化変動と宗教倫理
1. ヒンドゥー・仏教的社会基層にある宗教的寛容
2. パンチャシラ国家
3. 苦難に関する宗教倫理
4. メシアニズム
5. 苦難の理解における宗教的な影響
B. 社会経済史的環境:貧困・富裕・開発
1. スタルジョの物語
2.「成長」の幻想と「開発」の神話
3. 民衆経済へ向けた経済構造改革
4. 民衆経済原則と教会の宣教
C. 日本軍政下におけるインドネシア社会
1. 日本軍の「軍政基本政策」
2. 日本の南進とインドネシア民族指導者の態度
3. 「慰安婦」と「労務者」の悲惨
4. 日本軍政と抗日地下運動
5. 軍政監部の宣撫工作
む す び
D. クバティナンとキリスト教
はじめに
1. クバティナンの歴史的諸相
2. 宗教との関係におけるクバティナン
3. クバティナン思想の本質と形態
む す び
E. イスラム運動とキリスト教会
1. ムハマディアとキリスト教会
2. ナハドゥラトゥル・ウラマとキリスト教
F. カルティニの女性解放闘争と宗教思想
1. ジャワの封建的慣習に対するカルティニの女性解放闘争
2. キリスト教宣教に関するカルティニの理解
3. 神に関するカルティニの理解
4. 諸宗教に関するカルティニの理解
5. カルティニ書簡の読み方
むすび:現代インドネシア社会に対するカルティニ書簡の貢献
II インドネシア教会の伝統と歴史
A. インドネシア教会の三つの教会史的伝統
1. カトリック修道会の伝統
2. オランダ改革派教会の伝統
3. 敬虔主義の伝統
む す び
B. 植民地主義の終焉とキリスト教ミッション
1. インドネシアの独立とインドネシア教会の建設に向けて
2. 開発とインドネシア教会
3. 対話と解放: インドネシア社会の刷新へ向けて
C. 日本軍政下におけるキリスト教会
はじめに
1. ジャワ島のカトリック教会
2. プロテスタント教会の実情
3. 日本軍政のキリスト教政策
4. インドネシア教会の対応
5. 教会組織の困難と疲弊
6. 「東亜伝道」を担った日本人牧師たち
む す び
D. インドネシア教会のエキュメニカル運動の問題
1. 二重の取り組み:自己理解の努力と新しい神学の方法
2. 「インドネシア教会一致のための五文書」
E. 軍事政権下における教会の苦難
1. インドネシア教会の試金石としての東ティモール問題
2. 教会と国家の衝突:HKBP事件
む す び
III インドネシア教会の三つの神学的潮流
A. 開 発:第一の神学的潮流
1. T. B. シマトゥパン
2. P. D. ラトゥイハマロ
3. ブロト・スメディ・ウィリヨテノヨ
4. エカ・ダルマプッテラ
5. カレル・フィル・エラリ
B. 対 話:第二の神学的潮流
1. ヴィクトール・ターニャ
2. ボノウィラットモ
3. Th. スマルタナ
C. 解 放:第三の神学的潮流
1. J. L. C. アビネノ
2. S. A. E. ナババン
3. ヨセフ・ウィディアットマジャ
4. A. A. イェワング
5. マリアンネ・カトッポ
6. エマヌエル・ゲリット・シンギ
結 論
【著者について】
木村公一(きむら・こういち)
1947年生まれ。東京神学大学修士課程、西南学院大学、United Theo- logical College(南インド)、Asia Baptist Graduate Theo- logical Seminary(神学博士)で学ぶ。富野バプテスト教会牧師、1986年から2002年までの17年間、日本バプテスト連盟派遣宣教師としてインドネシアの中部ジャワにある神学大学で教える。現在、福岡市で牧師を務めるかたわら、福岡女学院大学、西南学院大学などで講師を務める。特にエキュメニクス(世界神学)分野の論文多数。著書『人間の盾――パクス・アメリカーナとキリストの平和』(新教出版社、2003)