福音と世界 2012年11月号

福音と世界 2012年11月号

本体価格:600円(10%税込定価: 660円)

サイズ:A5判 80ページ
月刊誌:1952年4月創刊
年間予約(送料共):8,460円(10%税込定価: 9,306円)

内容紹介

はじめに
 与えられた課題は、旧約テクストをベースに、動乱する社会における霊性の問題を考えることである。近年、書店の棚には「霊性」とか「スピリチュアリティ」という表題を冠せられた書籍が数多く並べられている。それらの一部には神懸かり的で、ある種、現実逃避的な性格が感じられる。この傾向は初代教会が批判を加えたグノーシスにも通じるものがある。聖書の宗教の担い手は、グノーシス派が懐いた思索の世界で完結される神との一体によりすべての問題が解消してゆくとする理解とは異なり、「自分のように隣人を愛する」という実践的な志から、困難な現実と向かい合い、当事者の痛みに共感する(シンパシー=文字通り「痛みを共にする」こと)中で示される連帯性――それが人を生かし、そこに神の意志が働くと考えた。
この点でフィリップ・シェルドレイクの見解は妥当といえる。彼は四世紀初頭の修道制出現の時期からルネサンス、宗教改革期、理性の時代、モダニティ、ポストモダニティまでキリスト教世界における「霊性」の展開を追った。彼はその受け止め方が歴史の中で徐々に根源から分離していることを指摘し、この語を「人々がそれによって生きようとする最も深い価値や意味に関わる……人間精神およびそれが十全な可能性に達するのを助けてくれる……ある種のヴィジョンを意味」(1)するものと定義づける。このくだりを読み、筆者は、世界保健機関憲章の「健康とは……肉体的にも、精神的にも、社会的にも、すべてが満たされた状態」(一九四八年発効)という有名なフレーズを思い起こした。二〇世紀末には、ここに提示された三条件(肉体、精神、社会)に「霊性」を加えようとする動きがあった。「霊性」は人の可能性を十全に発揮させる重要な要素と認識されているのだ。

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福音と世界

毎月10日発行(小社入庫)。
教会と社会の課題を扱う神学的オピニオン誌。1952年4月創刊。

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