福音と世界 2012年9月号
内容紹介
福音書にキレネ人シモンという人物が出てくる。イエスが十字架を背負い、処刑台の場所であるゴルゴダの丘を登る途中、体力が尽きてこれ以上十字架を担ぎきれないでいると、たまたま田舎から出て来て通りかかったキレネ人シモンに無理やり十字架を担がせたのであった。キレネとはアフリカ大陸の最北部にある地域の出身と言われる。ところで何故、大勢の群衆の中からこのキレネ人の男がイエスの十字架を無理に担がされたのか? 偶然だろうか? ここは兵士たちによる意図的な、差別的な選択があるということが考えられる。もし、群衆のユダヤ人の中から選べば、群衆の反発を買うと兵士らは考えたのではないか。そこで如何にも外国人であろう肌の違う異邦人を見つけ、”こいつに担がせば、誰も文句はないだろう”という差別的な視点が兵士たちにはあったと思われる。案の定、シモンが十字架を背負った時、群衆はただの傍観者でしかなかった。誰一人、シモンを助けようとするものはいなかった。