福音と世界2012年12月号
内容紹介
ボンヘッファーと決断
ディートリッヒ・ボンヘッファー(一九〇六?一九四五年)とホロコーストの関わりは、シンドラーやソハの場合とは異なっている。裏側の世界からユダヤ人と接触し現実のやりとりを通じて彼らの人間性と自身の人間としての責務に目覚めていった彼らとは違い、ボンヘッファーは一九三三年一月三〇日にヒトラーが政権についたその瞬間から、政権に内在する問題を、明確な自覚を持って社会的・倫理的・神学的に捉えていた。ベルリン大学私講師となっていたボンヘッファーは、二日後の二月一日には「若い世代における指導者理念の変遷」と題するラジオ講演を行なう。明らかにヒトラーを意識して個人崇拝的集団主義を批判したこの講演は、放送途中で突如打ち切られ、結論を欠く内容への誤解を恐れたボンヘッファーが仲間に回状を送る事態となった。